お口の中には約800種類の細菌が1000億個以上生息しています。そのため歯周病や虫歯の治療により歯茎から出血すると歯周病菌やむし歯菌が血液中に入ることがあります。このように身体の血液の中に細菌が存在する自状態を“菌血症”と呼びます。現在では、歯周病やむし歯の治療、抜歯などの歯科治療だけではなく、歯磨きやご飯を食べるだけでも、血液中に細菌が侵入し、菌血症を発症することが明らかになっています。
ただ通常では、細菌が血液中に侵入しても、マクロファージのような免疫細胞に捕まって速やかに排除されすぐに回復します。しかしながら、免疫に異常を持つ患者さん、心臓にペースメーカーや人工弁を装着されている患者さん、大きな手術を受けられて体力の低下した患者さんや高齢者の方はもちろん、何らかの理由で免疫力が低下している方はそのような体の防御メカニズムがうまく機能せず、菌血症から細菌性心内膜炎や脳への感染などの発症リスクが高まることが報告されています。
そのため歯科治療前には口腔内細菌を一時的にでも減らしてから治療を行うことが賢明です。
当院で治療前に殺菌水を使用して、口腔内洗浄・殺菌を行ってから治療に入るのはそのような理由によるものです。市販のうがい薬にも殺菌効果があるものがありますが、細菌はバイオフィルムという膜で覆われています。その膜を破壊しないと細菌への効果がありません。そこが市販のうがい薬と当院で使用している殺菌水の大きな違いです。
殺菌水は15秒間はバイオフィルムを分解する働きをします。強いうがいにより15秒後にはphが変化し殺菌効果へと変わります。2回の強いうがいによりプラーク(歯垢)のバイオフィルムを破壊して多くの細胞を死滅させることで、安全な治療を行うことが目的です。
院長 伊藤 克紀