福島県郡山市の歯医者 宝沢伊藤歯科医院

むし歯治療

21世紀のむし歯治療の考え方

歯は他の臓器や器官と違って自然治癒することがない唯一の器官です。一度むし歯で穴が開いたところや一度削られたところは元通りになることはありません。

ですから削る必要があるむし歯かどうかの適切な診断が重要です。また、穴が開いてしまったむし歯はM.I(ミニマルインターベンション)の概念に沿った治療法が望まれます。
さらにむし歯が進行し歯髄炎を起こしている場合も抜髄治療の必要性の判断をしなくてはなりません。
そしてさらにむし歯が進行し歯根まで進行してしまったむし歯は保存すべきなのか抜歯すべきなのかの診断が必要です。

21世紀になり、道具や材料の進化や開発により、むし歯治療の概念も大きく変わりました。歯の構造を理解し、むし歯がどの段階にあるのかを見極めて、的確な診断のもと適切な治療を行うことにより、歯の寿命を格段に伸ばすことができます。
歯を大切にするための治療法を選択してください。

歯の断面図

むし歯の進行

C0(要観察歯)

C0(要観察歯)
初期むし歯の中でも初期のむし歯です。歯の表面が白く濁ってくすんで見え、ザラつき始めた状態や奥歯の溝の部分が茶褐色に変色してきている状態です。

この段階のむし歯は絶対に削ってはいけません。適切なプラークコントロールと生活習慣の改善によって再石灰化が起こることで進行抑制ができますし、もとどおりに戻る可能性もあります。

ダイアグノデント

C1

C1
歯の表面を覆っているエナメル質が脱灰(歯が溶ける)している状態です。痛みを感じることはありません。この段階のむし歯もまだ削る治療は時期尚早です。最善の治療法はレーザー治療です。
Nd:YAGレーザーにより脱灰部分の細菌の殺菌に加え、脱灰が始まったエナメル質の蒸散と再石灰化作用により、むし歯の進行を一旦止める効果が期待できます。歯は一度削ってしまえばもとには戻らないのでレーザーによる削らない治療が歯の延命には最善の治療といえます。

Nd:YAGレーザー

C2

象牙質の層にまで進行してしまったむし歯は残念ながら削る治療が必要となります。M.I(ミニマルインターベンション)の概念に沿ったむし歯治療が必要です。
MIとは健全歯質をできるだけ削らないという考え方の、むし歯管理における最小限の介入のことです。

M.Iの1つに「カリソルブ治療」があります。



カリソルブ(歯を削らないむし歯治療)

カリソルブ(Carisolv)はスウェーデンで開発されたむし歯を除去する薬です。
ドリルで削り取る通常のむし歯治療は、健康な部分も削り取ってしまいますが、この方法ではむし歯菌によって浸食されている部分のみを専用の薬剤で軟らかくして、専用の器具で除去する方法なので、健全歯質を保存することができます。


痛みも感じにくく、麻酔を使わないで治療できるケースがあります。
「カリソルブ治療法」はまさに『M.I』の概念に沿う治療法であり、1998年にスウェーデンで導入開始され、日本では2007年に厚生労働省で認可されたばかりの比較的新しい治療法です。

セラミック修復治療

もう1つは接着技術によるセラミック修復治療です。
修復物(詰め物)の装着には2種類の原理があります。それは合着と接着です。

合着は主に金属修復の時に使用します。合着とは歯と修復物の間のわずかな凸凹にセメントが入り固まることで外れにくくなるという機械的な原理です。接触面積が大きいほど安定するので少し大きめに歯を削る必要があります。また、経年的にセメントが溶出するために隙間ができ、そこから新たなむし歯(二次う蝕)になりやすいのが欠点でした。

一方、接着は主にセラミック修復に使用します。歯と修復物の接触面を接着剤を介して科学的に結合する現象であり、長期間安定するため新たなむし歯の発生を防ぐことができます。また、接着技術の進歩により、接触面積が小さくても安定して接着するため歯を大きく削る必要がないのもメリットです。

レジン セメント

レジン セメント

3Mセメントの使い分け



カリオロジー(う蝕学)の専門書『Dental Caries』にも、修復治療の成功には封鎖が重要な鍵をにぎり、合着よりも“接着”を利用した修復治療が望ましいことが記されています。

C3

C3
さらにむし歯が深部へと進み、象牙質を超えて歯髄(神経)にまで達した状態です。歯髄炎を起こしており、急性化すると激しい痛みを伴います。慢性で経過すると歯髄壊死を起こすこともあります。

ここまで進んだむし歯は積極的かつ早急な治療が必要になります。治療方針で大切なのは神経をとる必要があるかどうかの判断です。神経をとる治療をすれば歯は弱くなり、将来、破折の危険性が高まります。

ですから、回復できる神経の場合、神経を保護するような治療が求められます。ドックベストセメント治療がその1つです。


削らない治療法『ドックベストセメント治療法』

「歯の治療法と聞いて思い浮かべるものは何?」
歯科医師に聞いても患者さんに聞いてもきっと最初に思い浮かぶのは、注射とドリルでしょう。

しかし、歯科医療法の先進国であるアメリカやドイツでは別な答えが返ってくるようになりました。それが『ドックベストセメント』なのです。

Doc's Best

 20世紀後半アメリカで開発され21世紀初頭にはヨーロッパ各国にも広がった、むし歯を残したままでむし⻭歯治療法ができるという夢のような治療法です。削らないので注射もドリルも必要ありません。(セメントを詰めるための枠作りの切削は必要です。)

むし歯は病原菌によって起こる病気ですからその病原菌の撃退が、むし歯治療になります。人の身体には自然治癒力(免疫⼒)が備わっていますから、他の臓器であれば感染部位を切除しなくても、リンパ球などの免疫担当細胞が細菌やウィルスを撃退し、もとの健康な状態に戻してくれるのです。
しかし、歯には他の臓器のように自然治癒力が備わっていませんから、むし⻭菌によって感染し、軟らかくなった部分は周りの健康な部分も含めて一塊に取り除かない限り、その進⾏を⾷い止められないというのが今までのむし⻭治療の概念でした。
過去にもわすかに残した感染部分に殺菌と鎮静を期待して、抗生物質をミックスしたものを貼薬する⽅法(3MIX‒MP法)がありましたが、残した感染源が多いとうまくいかず、さらに薬による副作⽤が問題となり、欧米ではその手法は広まりませんでした。

しかしドックベストセメントの出現により、削る量を最小限に抑える医療が実現しました。それは「削り取って治す」→「殺菌して治す」に変わったということです。

 ・ドックベストセメント治療の材料は天然ミネラル 
3Mix法は、抗生物質のため人によってはアレルギーなどの可能性が完全に無いとは言えず、また妊娠中は使用できません。
それに比べてドックベストセメントは、銅やリン酸、亜鉛など、天然ミネラルを主成分にしているため、副作用などの危険はありませんので、妊娠中の使用も可能です。

 ・ドックベストセメント治療は殺菌力がずっと続きます 
3Mix法は、薬剤を混ぜてからの殺菌効果が24時間しかありません。3Mix法の場合、蓋を完全にすることによって、24時間の殺菌力でも有効に働きますが、蓋が完全に出来ないと殺菌効果は下がってしまいます。
これに比べてドックベストセメントは、ドックベストセメントの鉄(Fe)イオンと銅(Cu)イオンのコンビネーションによる殺菌力が永遠に出続けるため、殺菌力が永続的に続きます。
ドックスベストセメントとはアメリカで開発され、1990年代、アメリカの歯科医師Dr.Tim Fraserが、患者さんの口の中に残っていた銅セメントに注目して研究を始め、無害で安全で殺菌力に優れたドックスベストセメントを使った治療を開発しました。
アメリカ食品医薬品局(FDA)の認可が得られており、その安全性には問題がありません。

※入手経路 doc best受注センター((株)ステムズ)を通して購入

ドックスベストセメント治療法の注意事項

  • 保険適用外の治療です。
  • 薬事未承認の医薬品を使用します。
  • すでに自発痛があったり、むし歯が神経に達している場合は適応になりません。
神経を取らなければならない場合

根管充填

回復できない神経や壊死した神経は速やかに取り除き、神経の管に薬を詰める治療をします。

C4

C4
歯根にまで広がってしまったむし歯です。抜歯を行うべきですが、特殊な治療(矯正的挺出、クラウンレングスニング)により保存的治療が可能になる場合があります。

矯正的挺出

クラウンレングス

それらの方法でも保存が難しい時は抜歯することが懸命です。使えない歯をそのまま残しておけばそこは細菌の住みかになり周りの歯や骨に悪影響が出るからです。