「フロスか死か!(Floss or Die!)」これは「デンタルフロスや歯ブラシをきちんと使って、口の中を健康に保って長生きしますか?それとも歯周病になって、さらに命を脅かす別の病気にもかかり死にますか?」という意味です。
1998年にアメリカの歯周病学会が歯周病がさまざまな全身疾患の大きな危険因子になっているというセンセーショナルな論文を公にし、マスコミがそのようなコピーをつけて全世界に発信しました。
近年、歯周病と全身疾患の関わりの研究が増加し、日本でもテレビや雑誌で取り上げられています。
歯周病菌からの毒素や歯周病菌それ自体が歯ぐきから毛細血管を通り、太い血管に侵入し、全身に送られることにより、様々な疾患を引き起こすのです。
例えば、歯周病患者では致命的な心臓発作を起こす確率が健常者の2.8倍もあり、また誤嚥性肺炎の危険性も高まります。歯周病と糖尿病の関係も深く、糖尿病だと歯周病は悪くなり、歯周病だと糖尿病は悪くなると言われています。他にも脳血管疾患、高血圧、妊婦の低体重児出産や早産との関わりも報告されています。
たかが歯周病と甘く見ていると、大きな問題に発展していく可能性があるのです。しかし逆の発想をすれば、歯周病の治療が他の臓器の病気の発症を予防したり、抑制することにつながるのです。
実際に糖尿病患者が歯周病の治療を行ったことにより、HbA1c・血糖値の数値が減少した例もあります。
このセミナーで疾患のメカニズムや実際の症例を知ることにより、改めて歯周病と全身疾患が密接に関わっていると深く実感しました。
今後、歯周病治療をしていくにあたり、患者さんの口腔内を診るだけでなく、患者さんが身体的・精神的にどのような状況にあるのかを考えながら、健康をサポートしていきたいと思います。
歯科衛生士 上野 みなみ