最近、「歯を削らない治療」がマスメディアで取り上げられる機会が増えているので少し解説をしたいと思います。
20世紀の歯科医療は、歯を削り続けて、削れなくなったら抜いていく「健康消費型医療」でした。21世紀は予防して守っていく「健康増進型医療」が中心になるでしょう。欧米ではすでにそのような歯科医療が中心となり、高齢者の義歯使用者が減り歯科医療がQOL(生活の質の向上)に貢献しています。宝沢伊藤歯科医院も欧米の考え方で治療や予防をすることを勧めています。
現在、ドリルで歯を削らない「むし歯治療」には①レーザー治療 ②オゾン療法 ③3Mix-MP法 ④カリソルブの4つの方法があります。
このうちレーザー治療とオゾン療法は、初期むし歯の治療に主に使用され、細菌を殺菌してむし歯の進行を止める治療法です。レーザー治療に関しては歴史も古くレーザー学会からの治療効果に対する臨床報告も多くあり、安全で確実な治療法であるため宝沢伊藤歯科医院でも行っております。特に、当院で使用している「ネオジウム・ヤグ・レーザー」は殺菌のみではなく「歯質強化」もできるレーザーですから、術後の再発も抑えることができます。自信を持ってお勧めできる治療法です。
オゾン療法は有効な治療法になっていく可能性はありますが、学会からの治療効果の報告はまだなく、そのため厚生労働省の認可もおりていません。使用法も確立していない治療法です。今後のさらなる研究に期待したいと思います。
3Mix-MP法は3種類の抗生物質を混合し、歯に詰めて殺菌と歯の神経の鎮静を行う方法です。当院でもほんの一時期臨床応用した方法ですが、『日本歯科保存学会』から2009年に「保存領域の治療に用いた場合の安全性と有効性に関する高いレベルの化学的根拠がなく、現状では保存領域の治療技術として容認できない」との見解が出されたため、現在は使用していません。
カリソルブはむし歯になった部分を選択的に溶かしてくれるという薬剤を使用した治療法です。健康な部分は溶けないので、ドリルで削る方法に比べ、健康な歯質を多く保存できることが大きなメリットで、宝沢伊藤歯科医院でも導入を考えた薬剤です。しかし、術後の形態が複雑になってしまうため、その後の詰め物に軟らかい樹脂しか使えず、また歯と歯の間にかかるむし歯には適応できないことが問題です。確実性にも問題があるという報告もあります。健康保険が適応とならず費用がかかるのも問題です。以上の理由から当院では使用しておりません。
ドリルで歯を削らずに治療ができるのは、歯牙の負担も患者さん自身の負担も少なく、良い治療法です。現状では、上記のような理由からレーザー治療だけを取り入れております。特に小児の初期むし歯には有効と考えています。お子さんの将来の歯の健康のためにも積極的にご利用ください。
院長 伊藤 克紀