むし歯の治療と聞いて思い浮かべるものは、歯科医師も患者さんもきっと注射やドリルでしょう。しかし、歯科医療の先進国であるアメリカやドイツでは別なものが思い浮かぶようになってきました。それは
『ドックベストセメント』です。
20世紀後半アメリカで開発され21世紀初頭にはヨーロッパ各国にも広がった
むし歯を削らずにむし歯治療ができるという夢のような治療法です。削らないので注射もドリルも必要ありません。(セメントを詰めるための枠作りの切削は必要です。)
そもそもむし歯は病原菌によって起こる病気ですから、その
病原菌の撃退こそがむし歯治療の本質になります。通常、病原菌によって起こる風邪などの病気であれば、特に治療をせずとも安静にさえしていれば、
自然治癒力(免疫力)によって勝手に治っていきます。しかし、自然治療力を持たない歯は勝手には治ってくれません。ですから今までは、むし歯菌の巣を(健康な部分も含めて)大きく歯を削りとることで病原菌の撃退をしてきました。しかし、
「削り取って治す」→「殺菌して治す」治療ができるようになったのです。それがドックベストセメント治療なのです。
過去にもわずかに残した感染部分に殺菌と鎮静を期待して、抗生物質をミックスしたものを貼薬する方法(3MIX-MP法)がありましたが、残した感染源が多いとうまくいかず、さらに薬による副作用が問題となり、欧米ではその手法は広まりませんでした。
しかし、ドックベストセメント治療は、その効果も安全性も確実です。
(ドックベストセメントの治療順序および作用機序)① 洗浄。消毒(当院では殺菌水による洗浄·消毒を行いますので薬剤による消毒より安全で確実です。)
② 浸透性が高い液体と混ぜてドックベストセメントをむし歯深くまでしみ込ませ、病原菌を撃退する。
③ ドックベストセメント層を作り、1年かけて感染部位の再石灰化を行う。
④ ドックベストセメントを守るためのコーティングを行い終了

〈ドックベストセメントの特徴〉① ほとんど削らないので麻酔が必要ない
② 健康な部分を削る必要がなく、ドックベストセメントに殺菌・鎮静効果があるため神経を残せる可能性が高まる
③ 治療回数が減る
④ 殺菌力が持続するのでむし歯の再発が起こりにくい
⑤ 銅を中心としたミネラルが主成分なので副作用はなく身体にやさしい
《注意》
・神経深くまで感染が及んだ痛みの強い歯には使えません。
・初期むし歯には適応となりません。(レーザー治療で対応します。)
・審美性が要求される部位には適応とならないこともあります
・日本の薬事法の認可を受けていないため自費診療となります。
・再石灰化が完了するまでは仮修復のため、1年後に最終修復処置が必要となります。
ドックベストセメントは、健全歯質を守り、神経を守ってくれるので、歯の寿命を延ばすことができる治療法です。
宝沢伊藤歯科医院は、ドックベストセメント治療を推進します。
院長 伊藤 克紀